【新法民泊→旅館業】180日の壁を超えて“ホテル化”するには?

— 必ず押さえたいポイントと手続きの流れを解説 —

民泊事業に対しては、年間営業日数の上限や安全・衛生面での規制強化など、制限を強める動きが各地で見られます。
「180日の営業制限では収益が安定しない」「今後の規制強化に備えたい」と考えるオーナー様にとって、旅館業への切り替えは、安定的な運営の一つの選択肢となっています。

しかし、
“届出制の民泊”から“許可制の旅館業”へ移行するには、建築・消防の基準が一段階厳しくなる
ため、事前準備が欠かせません。

この記事では、民泊から旅館業のホテルへ移行するために必要なポイントを、できるだけわかりやすくまとめました。

1. 新法民泊と旅館業の違いをまず理解する

● 営業日数の上限

制度 根拠法 手続き 営業日数
新法民泊 住宅宿泊事業法 届出 年間180日以内
旅館業 旅館業法 許可 上限なし

新法民泊は「住宅を活用した副業的な宿泊事業」であるため、営業できる日数に上限があります。
一方で旅館業は「宿泊施設としての営業」であり、日数制限はありません。

● 届出と許可の違い

  • 新法民泊:要件を満たせば届出だけで開始できる(比較的簡易)

  • 旅館業:建築・消防設備が法令基準を満たしているかの審査が必要(ハードル高め)

そのため、同じ部屋を使っていても、全く別の制度だと考えた方がわかりやすいです。

2. 旅館業への切り替えで必要な“3つの大きな壁”

① 建築基準法(用途変更の確認)

現在民泊として使っている部屋は、建築上「住宅」扱いです。
これを「ホテル・旅館」として使う場合、用途変更が必要になることがあります。

  • 床面積200㎡を超えて変更する場合 → 用途変更の建築確認申請が必要

  • 用途地域によっては、そもそも旅館業ができない区域もある

→ まずは「この場所で旅館業が可能か?」の確認が必須です。

② 消防法(消防設備の強化)

旅館業に切り替えると、防火上の安全性が求められるため、消防設備が大幅に増える場合があります。

例)

  • 誘導灯(避難口や通路に必要)

  • 自動火災報知器

  • 防炎カーテン・防炎マットレス
    など

旅館業許可の申請前に、消防署で消防法令適合通知書を取得する必要があります。

③ 旅館業法の構造設備基準

ホテル営業として申請する場合、満たすべき基準が増えます。

主な例:

  • 客室面積が7㎡(ベッド有なら9㎡)以上

  • 他室を通らずに出入りできる構造

  • 玄関帳場(フロント)または代替設備が必要

※簡易宿所(ホステル型)と比べると、ホテル・旅館営業は基準が厳格です。

3. 新法民泊→旅館業ホテルへ移行する流れ

① 事前相談(最重要)

まずは建築・消防・保健所の3つへ平行して相談します。

  • 建築:用途変更の要否、用途地域の確認

  • 消防:必要な設備と工事内容

  • 保健所:旅館業の構造基準の確認

※平面図があると話が早く進みます。

② 新法民泊の廃止届を提出

民泊をやめる場合、知った日から30日以内に廃業届が必要です。

③ 必要な工事を実施

  • 客室面積や換気の確保

  • 誘導灯の設置

  • 自動火災報知器の設置

  • 玄関帳場の設置 など

「旅館業の基準」と「建築基準法・消防法」の2つを同時にクリアする必要があります。

④ 消防・建築の適合証明を取得

  • 消防法令適合通知書

  • 用途変更の検査済証(必要な場合)

⑤ 近隣への周知

住宅を活用する場合は、近隣住民に対して事前に説明するよう努める必要があります。

⑥ 旅館業許可申請

保健所に書類一式を提出します。
手数料の目安:22,000円程度

⑦ 現地調査 → 許可交付

基準適合が確認できれば、許可証が交付されます。
取得の目安は 約2週間(平日のみ) です。※地域によりますので、詳しくは各地方自治体にお問い合わせください。

★移行を検討中のオーナー様へ

  • 用途地域

  • 消防設備

  • 客室の広さや構造

  • フロントの有無

これらは「物件ごとに可能かどうか」が大きく変わるため、
まずは所轄の建築・消防・保健所へ事前相談を行うことが成功のカギです。

必要であれば、オーナー様の物件について「旅館業にできるか」「どの程度の工事が必要か」も一緒に確認できますので、お気軽にご相談ください。

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