特定小規模施設用自動火災報知設備の連動範囲〜共同住宅で一般住民が混在している場合の考え方〜

民泊や簡易宿所を始める際に、よくご質問をいただくのが
「特定小規模施設用自動火災報知設備(特小自火報)は、どこまで連動させる必要があるのか」
という点です。

特に、アパートやマンションなどの共同住宅で、一般の住民と民泊利用者が混在しているケースでは、判断に迷われる方が多いと思います。

今回は、その考え方を整理してご説明します。

そもそも「特小自火報」とは?

特定小規模施設用自動火災報知設備(特小自火報)は、
小規模な宿泊施設向けに設けられた、自動火災報知設備の特例制度です。

多くの場合、

  • 無線式

  • 感知器自体が警報音を発する

  • すべての感知器が連動して鳴動する

といった特徴を持っています。

これは、建物に不慣れな宿泊者が、火災時にすぐ異常に気づき、避難できるようにするためです。

 重要な前提として
設置する場合は、設置範囲内のすべての感知器が連動する設定が必要です。

① 共同住宅(住民混在)の消防法令上の位置づけ

アパートやマンションの一室を民泊として利用する場合、建物全体の消防法上の用途は、民泊部分の割合によって次のように扱われます。

  • 民泊の割合が小さい場合
      複合用途(16項イ)

  • 民泊の割合が大きい場合
      宿泊施設(5項イ)

つまり、
「一部が宿泊施設として使われている共同住宅」
という扱いになるのが一般的です。

② 特小自火報の設置範囲は「民泊部分のみ」で足りる?

共同住宅で民泊を行う場合でも、一定の条件を満たせば、民泊として使う住戸内のみに特小自火報を設置すれば足りる
とされるケースがあります。

代表的な条件は次のとおりです。

【民泊部分のみ設置で足りる主なケース】

  • 建物の延べ面積が300㎡未満

  • 建物の延べ面積が300㎡以上500㎡未満で、次のいずれかに該当

    • 民泊部分の面積が、建物延べ面積の 10%以下

    • 民泊部分の面積が 10%を超えるが300㎡未満
       (いずれも原則2階建て以下)

このような場合、建物全体ではなく、民泊を行う住戸内のみの設置が認められることがあります。

③ 住民混在の場合の「連動」の考え方

● 基本原則

特小自火報を設置する場合は、

設置した範囲内の感知器は、すべて連動させる

ことが必要です。

つまり、
民泊住戸内に設置した感知器同士は、すべて連動して鳴動する必要があります。


● 一般住民の住戸とも連動させる必要はある?

結論からいうと、
上記の設置特例が適用される場合、一般住民の住戸まで連動させる義務は、原則ありません。

特小自火報は、

  • 「特定小規模施設(=民泊部分)」

  • 「宿泊者の安全確保」

を目的とした設備であり、住戸単位で完結する安全措置として位置づけられています。

そのため、

  • 民泊住戸内:特小自火報を設置・連動

  • 一般住民の住戸:既存の住宅用火災警報器のみ

という形でも、要件を満たすケースがあります。

④ 建物全体に通常の自動火災報知設備がある場合

建物の延べ面積が 500㎡以上 などで、
すでに 建物全体に通常の自動火災報知設備が設置されている場合は、

民泊を始めるからといって民泊住戸に特小自火報を追加設置する必要はありません

ただし、

  • 宿泊施設としての管理

  • 点検・維持義務

は別途発生しますので、その点は注意が必要です。

まとめ(結論)

✔ 特小自火報の設置特例が適用される場合
✔ 共同住宅で一般住民が混在している場合でも

民泊住戸内に設置した感知器が、すべて連動していれば、要件を満たすと考えられます。

一般住民の住戸まで含めて連動させる必要は、原則としてはないと考えてよいでしょう。

最後に(重要)

消防設備の判断は、

  • 建物の構造

  • 階数

  • 延べ面積

  • 自治体ごとの運用

によって異なることがあります。

最終的な判断や特例の適用可否については、必ず所管の消防署へ事前相談を行うことをおすすめします。

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