誘導灯は免除できる?一戸建て住宅の場合
一戸建て住宅を使って
旅館業(簡易宿所・ホテル・旅館)
民泊(住宅宿泊事業)
を始めようとすると、必ず出てくるのが消防設備の問題です。
中でも多くのオーナー様が悩まれるのが、
「誘導灯(非常口マークの緑のライト)は必ず付けないといけないの?」
という点です。
誘導灯は設置費用もそれなりにかかるため、「免除できるなら免除したい」と考える方も多いでしょう。
結論から言うと、一戸建て住宅でも、条件を満たせば誘導灯が免除される可能性はあります。
ただし、消防法で定められた細かい条件をすべて満たす必要があります。
ここでは、その考え方と条件を、できるだけ分かりやすく解説します。
1.一戸建てでも「宿泊施設」として扱われます
まず大切な前提です。
一戸建て住宅であっても、宿泊料をもらって人を泊める事業を行う場合、消防法では原則として
「宿泊施設(5項イ)」
という扱いになります。
これは、不特定多数の人が利用し、宿泊者が建物に不慣れなため、火災時に避難が遅れる危険があると考えられているからです。
そのため、原則として誘導灯の設置が必要とされています。
2.誘導灯が免除される「特例」とは?
消防法には、「誘導灯がなくても安全に避難できる」と認められる場合に限り、誘導灯の設置を免除できる特例があります
(消防法施行令第32条)。
ポイントはとてもシンプルです。
初めて来た宿泊者でも、迷わず外へ逃げられるかどうか
これが図面や設備で客観的に説明できることが必要です。
3.1階(避難階)で必要な条件
一戸建てを宿泊施設として使う場合、通常は1階が「避難階」になります。
1階で誘導灯を免除するには、次のすべてを満たす必要があります。
① 避難経路がとても分かりやすいこと
各部屋から直接外へ出られる
または
廊下に出れば、迷わず避難口に行ける構造であること
※ 曲がりくねった廊下や、分かりにくい動線はNGです。
② 建物の外でも安全に離れられること
建物から出たあと、窓や出入口の近く(3m以内)を通らずに安全な場所へ移動できること
※外に出ても、火や煙の影響を受けにくい動線が必要です。
③ 避難経路図を掲示すること
宿泊者がすぐ理解できるよう見やすい場所に避難経路図を掲示すること
※ 「ここからどう逃げるか」が一目で分かることが重要です。
4.2階以上で必要な条件
2階以上の階でも誘導灯を免除するには、さらに次の条件を満たす必要があります。
① 階段まで迷わず行けること
各部屋から廊下に出れば、すぐ階段にたどり着ける簡単な経路であること
② 停電しても足元が見えること
次のどちらかが必要です。
廊下などに非常用照明(停電時に点く照明)を設置
もしくは、各部屋に懐中電灯などの携帯用照明を常備
※ この非常用照明は、住宅宿泊事業法で設置するものを兼ねても問題ありません。
③ 避難経路図を掲示すること
1階と同様に、見やすい位置への避難経路図の掲示が必要です。
5.非常用照明と誘導灯の関係
ここで混同しやすいポイントです。
誘導灯
→「非常口はこっちですよ」と方向を示すもの
非常用照明・懐中電灯
→ 停電しても足元を照らすためのもの
誘導灯の免除を受ける場合、2階以上では、非常用照明や懐中電灯が“代わりの役割”として必要になります。
なお、民泊では条件によって非常用照明そのものが全体免除になるケースもありますが、誘導灯を免除したい場合は話が別です。
たとえ非常用照明が全体免除になる条件を満たしていても、2階以上には非常用照明または懐中電灯の設置が必要になります。
6.必ず消防署に事前相談を
誘導灯の免除は、消防署に判断してもらう必要があります。
原則は、「設置が必要」であり、条件を満たす場合は「免除してもいい」ということなので、最終的には消防署が判断することになります。
そのため、一戸建てで旅館業や民泊を検討されている方は、必ず事前に管轄の消防署へ相談してください。
7.まとめ
一戸建てでも宿泊事業を行えば、原則は誘導灯が必要
ただし、
「誰でも迷わず安全に避難できる」構造と設備があれば、誘導灯が免除される可能性がある
1階と2階以上で条件が異なる
自己判断はNG、必ず消防署と事前協議を
「うちの建物は免除できるのか?」
気になる場合は、ぜひ早めに専門家や消防署へご相談ください。

