離婚協議書を作るべき理由とは?
離婚を話し合いで進める「協議離婚」は、日本で行われる離婚の多くを占めています。
お互いの同意があれば成立するというシンプルな制度ですが、「口約束」で済ませてしまうと、後々トラブルになることも少なくありません。
今回は、なぜ離婚時に離婚協議書を作るべきなのか、どのタイミングで作成するのが望ましいのかについて、行政書士の立場からわかりやすく解説します。
◆「口約束」はなぜ危険?
たとえば、離婚の際にこんな取り決めをしたとします:
-
養育費は月5万円、子どもが18歳になるまで払う
-
車はあなたに譲るから名義変更していい
-
子どもとは毎月1回会ってもいい
当事者間では納得していたとしても、後から「そんなことは言っていない」と主張されてしまえば証明ができません。
口頭の合意は、時間の経過とともに内容があいまいになりがちですし、感情の変化によって守られなくなることもあります。
その結果、養育費の不払い、財産分与でもめる、子どもとの面会が妨げられる…といったトラブルに発展してしまうのです。
◆離婚協議書とは?なぜ必要?
離婚協議書とは、離婚の際に夫婦で合意した内容を文書にしたものです。
主に以下のような内容を記載します:
- 親権者・監護者の特定
-
養育費(額・支払い方法・期間など)
-
財産分与(預貯金・不動産・車などの分け方)
-
慰謝料について
-
面会交流の方法(頻度・場所・時間など)
-
年金分割に関する合意内容 など
※当事者夫婦の事情によって記載内容は変わります
書面にしておけば、「確かにこの内容で合意した」という証拠になります。言った・言わないの争いを避けるためにも非常に重要な手段です。
◆いつ作ればいい?作成のタイミング
離婚協議書を作成するベストなタイミングは、離婚届を提出する前です。
具体的には:
-
離婚の合意内容がまとまった段階で作成
-
内容に不備がないか、お互いの合意に基づいているかを確認しながら書面化
-
必要があれば、公正証書化(後述)を検討
離婚届を出してしまった後では、相手との連絡が取れなくなったり、合意内容を変えられたりする可能性もあります。
したがって、「話し合いがまとまったら、離婚届よりも先に協議書を作る」という順序が安心です。
◆公正証書にすれば、さらに安心
離婚協議書は私文書(当事者同士で作成する書類)ですが、養育費など将来的な金銭支払いがある場合は、「公正証書」にしておくとより確実です。
特に「強制執行認諾条項」を付けることで、約束が守られなかった場合に、裁判を経ずに給与や預金の差し押さえが可能になります。
行政書士は、公証役場との連絡や書類準備、手続きのサポートなど、公正証書化に向けた実務的な支援を行うことができます。
◆行政書士にできること・できないこと
行政書士は、「合意が成立した内容を、わかりやすく正確に書面化する」専門家です。
以下のような方に向いています:
-
話し合いの内容がまとまっており、書面化だけ依頼したい
-
書類作成の形式面で不安がある
-
公正証書の作成手続きを手伝ってほしい
ただし、以下のことは行政書士にはできません:
-
離婚条件に関する法律相談(法的な有利・不利などの判断)
-
当事者間の代理交渉や仲介
-
紛争性のある案件の対応
これらは弁護士の業務となります。
場合によっては、弁護士をご紹介することも可能です。まずはお気軽にご相談くださいませ。