特定一階段等防火対象物とは?旅館業許可との関係
特定一階段等防火対象物とは?旅館業許可との関係
旅館業の営業許可を取得するためには、建築基準法や消防法に適合していることが前提条件となります。そのなかで注意が必要なのが「特定一階段等防火対象物」の扱いです。
◆ 特定一階段等防火対象物とは
特定一階段等防火対象物とは、地階または3階以上の階に特定用途があり、そこから避難階までに通じる階段がひとつしかない建物のことです。
※特定用途にあたる建物の例
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旅館・ホテル
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病院・診療所
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学校・保育所
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劇場・映画館
など
◆ 旅館が特定用途に含まれる理由
旅館は「不特定多数の人が寝泊まりする施設」です。
火災時にすぐに避難できない人も多いため、消防法や建築基準法で特に厳しい安全基準が設けられています。
◆ なぜ問題になるのか?
火災時に避難路が一方向に限定されると、煙や炎により逃げ道がふさがれてしまう危険性が高まります。そのため、法律上は「原則として建築不可」とされ、既存建物の場合も用途変更や旅館業許可申請の際に大きな制約を受けます。
◆ 旅館業許可に与える影響
ただし、一つしか階段がない場合でも、設備を強化することで旅館業の許可が下りる場合があります。
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既存建物を活用する場合:
- 防火区画の強化
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自動火災報知設備やスプリンクラーの追加設置
など、追加の安全対策を求められることがあります。
延べ面積300㎡未満といった要件を満たせば、配線工事が不要で簡易的な「特定小規模施設用自動火災報知設備」で可能な場合もあります。ただし、各階との連携が必要だったり、メッセージを発するタイプでないといけないなど、規制が設けられることもあります。詳しくは、管轄の消防署にお問い合わせください。
◆ 実務でよくある相談
「中古マンションの一室を旅館に改装したい」
→ 3階以上のフロアで階段が1つしかない場合、特定一階段等防火対象物に該当する可能性があります。許可申請前に、建築士や消防との事前相談が必須です。
「古い旅館を再生して営業再開したい」
→ 建築当時の基準では合法でも、用途変更を伴う場合は現行基準が適用されることがあります。設備改修コストが想定以上にかかるケースもあります。
◆ 行政書士としてできること
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旅館業許可申請の際の 建築・消防要件の事前調査
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建築士・消防設備士との連携による改修計画のサポート
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行政との 事前相談や旅館業申請の代行
旅館業を始めるにあたっては、書類準備だけでなく「建物の安全性をどう確保するか」が最大のポイントです。特に「特定一階段等防火対象物」に該当する建物では、思わぬ改修費用や工事期間が発生する可能性がありますので、早めの確認をおすすめします。