相続した実家、どうする?
相続した実家、売る?貸す?民泊にする?空き家を負担にしないための選択肢
親が亡くなり、実家を相続したものの、誰も住む予定がない。
「思い出のある家なので、できれば残しておきたい」
「売却するのはもったいないけれど、管理も大変」
「貸したり、民泊として活用したりすることはできないだろうか」
相続した実家について、このように悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
近年、全国的に空き家の増加が問題となっています。空き家は、所有しているだけでも維持管理の負担が生じますが、立地や建物の状態によっては、新たな収入につながる可能性もあります。
今回は、相続した実家の主な活用方法と、それぞれの注意点についてご紹介します。
1.相続した実家を放置するとどうなる?
誰も住まなくなった住宅は、定期的に管理しなければ、想像以上に早く傷んでしまうことがあります。
例えば、換気不足による湿気やカビ、雨漏り、庭木の繁茂、害虫の発生などです。
また、誰も住んでいなくても固定資産税などの負担は続きます。
2023年12月に施行された改正空家法では、放置すれば周囲に悪影響を及ぼすおそれのある空き家も「管理不全空家」として行政による指導などの対象となりました。
さらに、管理不全空家等として勧告を受けた場合、土地の固定資産税に関する住宅用地特例が適用されなくなることがあります。
つまり、空き家は「とりあえずそのままにしておく」という選択にも、一定のリスクがあるのです。
2.選択肢① 売却する
今後住む予定がなく、維持管理も難しい場合には、売却が一つの選択肢となります。
売却すれば、固定資産税や建物の管理にかかる将来的な負担を解消できます。
また、相続した空き家については、一定の要件を満たす場合、売却時の譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
ただし、対象となる建物の築年数や利用状況、売却時期などに条件があり、すべての相続不動産に適用されるわけではありません。
特例の適用を考える場合には、売却前に税理士等へ確認しておくことが大切です。
3.選択肢② 賃貸住宅として貸し出す
建物の状態が良く、住宅としての需要が見込める地域であれば、賃貸住宅として活用する方法もあります。
毎月の家賃収入が期待でき、建物を所有し続けられることがメリットです。
一方で、入居者募集や家賃管理、設備の修繕、退去時の対応などが必要になります。
また、古い住宅では、入居者を募集する前に水回りや内装の改修が必要になることもあります。
家賃収入だけで判断するのではなく、改修費用や管理費、将来の修繕費なども含めて検討することが重要です。
4.選択肢③ 民泊・宿泊施設として活用する
最近では、相続した戸建住宅を民泊や簡易宿所として活用するという選択肢もあります。
例えば、観光地へのアクセスが良い住宅や、家族・グループで宿泊できる広さのある住宅などは、宿泊施設としての活用を検討する余地があります。
住宅を売却せずに所有しながら、宿泊事業による収入を得られる可能性があることも魅力です。
ただし、一般の住宅をそのまま宿泊施設として営業できるわけではありません。
民泊と旅館業の違い
住宅を宿泊施設として活用する場合、主に次のような制度が考えられます。
住宅宿泊事業(いわゆる民泊)
住宅宿泊事業法に基づく届出によって営業する方法です。
年間の営業日数は180日以内に制限され、自治体の条例によって営業できる期間や区域がさらに制限される場合もあります。
また、住宅としての要件を満たす必要があり、長期間誰も住んでいない空き家などは、住宅宿泊事業の対象にならない場合があります。
旅館業(簡易宿所営業など)
旅館業法に基づく許可を取得して営業する方法です。
住宅宿泊事業のような年間180日の営業日数制限はありませんが、用途地域、建築基準法、消防法、施設の構造設備基準などを確認する必要があります。
まずは、その建物で営業できるかの確認を
民泊や旅館業を検討する際、特に重要なのが、物件の事前調査です。
具体的には、次のような事項を確認します。
- 用途地域や自治体の条例による制限
- 建物の用途や建築基準法への適合状況
- 消防設備の設置要件
- 住宅宿泊事業の住宅要件への適合
- 必要な改修工事とその費用
- 近隣住民への対応や管理体制
これらを確認せずに改修工事を進めてしまうと、後から追加工事が必要になったり、そもそも営業ができなかったりする可能性があります。
当事務所でも旅館業許可や住宅宿泊事業の届出を取り扱っていますが、宿泊施設としての活用を検討する場合は、改修工事や設備投資を行う前に、営業の可否を確認することが大切だと考えています。
また、宿泊事業には清掃、予約管理、宿泊者対応、近隣からの苦情対応など、継続的な運営業務が発生します。
収益性だけでなく、管理会社への委託費用なども含めて検討する必要があります。
5.売却・賃貸・民泊、どれを選べばいい?
どの方法が適しているかは、建物の立地や状態、所有者の希望によって異なります。
早めに管理負担を解消したい場合は売却、安定した家賃収入を目指す場合は賃貸、観光需要が見込める地域で積極的に活用したい場合は宿泊事業など、それぞれに特徴があります。
また、すぐに活用方法を決められない場合でも、建物の状態を維持しながら、将来の売却や活用に備えておくことが大切です。
特に、相続人が複数いる場合は、不動産を誰が取得するのか、売却するのか、共有するのかなど、相続人間で十分に話し合っておく必要があります。
6.相続手続きと不動産活用を一緒に考える
相続した不動産を活用するためには、まず権利関係を整理することが重要です。
遺言書の有無、相続人の範囲、不動産の所有状況などを確認し、必要に応じて遺産分割協議を行います。
行政書士は、相続人間に争いがない場合の遺産分割協議書の作成や、相続関係書類の収集・整理などを支援することができます。
不動産の相続登記は司法書士、売却の仲介は宅地建物取引業者、税務申告は税理士など、それぞれの専門家と連携して進めることになります。
そして、相続した建物を民泊や旅館業として活用する場合には、行政書士が許認可手続きの面からお手伝いできることもあります。
まとめ|相続した実家を、これからどうするか
相続した実家は、単なる財産ではなく、ご家族の思い出が詰まった大切な場所でもあります。
だからこそ、すぐに売却することだけが正解とは限りません。
一方で、何も決めずに放置してしまうと、建物の老朽化が進み、将来の選択肢が狭まってしまうこともあります。
売却する、貸す、宿泊施設として活用する。
それぞれのメリットと注意点を理解し、ご自身やご家族に合った方法を検討してみてはいかがでしょうか。
当事務所では、相続に関する書類作成等のほか、旅館業許可申請や住宅宿泊事業の届出など、宿泊施設の開業に関する手続きを取り扱っています。
相続した不動産を宿泊施設として活用できるか知りたい方、空き家の活用を検討されている方は、お気軽にご相談ください。

