民泊と旅館業、結局どっちがいい? 2026年現在の選び方
「民泊を始めたいのですが、民泊と旅館業、どちらがいいですか?」
宿泊事業を始めたい方から、このようなご相談をいただくことがあります。
民泊は比較的始めやすそうだけど、年間180日までしか営業できない。
それなら、最初から旅館業の許可を取った方がいいのでは?と思われる方も多いでしょう。
ただ、実際には「たくさん営業したいから旅館業」「手軽に始めたいから民泊」と単純に決められるものではありません。
2026年現在、宿泊事業を始める際にどちらを選べばよいのか、実務の視点から解説します。
民泊と旅館業の大きな違い
ここでいう「民泊」とは、住宅宿泊事業法に基づく民泊(いわゆる民泊新法)を指します。
大きな違いを簡単にまとめると、次のようになります。
| 民泊(住宅宿泊事業) | 旅館業(簡易宿所など) | |
|---|---|---|
| 手続き | 届出 | 許可 |
| 営業日数 | 年間180日以内 | 原則として日数制限なし |
| 建物 | 「住宅」であることが前提 | 旅館・ホテル等として基準を満たす必要あり |
| 消防・建築 | 条件により対応が必要 | 用途・規模等に応じた対応が必要 |
| 自治体の規制 | 条例による営業制限がある場合あり | 自治体ごとの条例・基準等あり |
「届出だから民泊は簡単」と思われがちですが、実際には消防設備や家主不在型の場合の管理など、確認しなければならないことがいくつもあります。
一方、旅館業は許可制ですが、許可を取得すれば年間180日という営業日数の上限はありません。
民泊が向いているのはこんな場合
例えば、
- 年間180日以内の営業でも事業計画が成り立つ
- まずは小規模に宿泊事業を始めたい
- 住宅としての利用も残したい
- 旅館業では難しい物件で民泊の可能性を検討したい
といった場合には、民泊が選択肢になります。
特に「普段は自分たちで使用し、使わない期間だけ宿泊者に貸したい」というようなケースは、民泊との相性がよいでしょう。
ただし、180日というのは「だいたい半年営業できる」というだけではありません。
自治体によっては条例で営業できる期間や区域について、さらに制限を設けている場合があります。
そのため、実際に営業できる日数や曜日については、その物件が所在する自治体のルールまで確認する必要があります。
2026年、「ゼロ日規制」も話題に
最近、民泊をめぐって注目されているのが、いわゆる「ゼロ日規制」です。
住宅宿泊事業法では、自治体が条例によって民泊の営業期間を制限できる仕組みがあります。
2026年7月には、観光庁などから自治体に対して「ゼロ日規制」に関する技術的助言が出されました。
民泊をめぐっては、地域の実情に応じた規制のあり方について、今後も自治体ごとの動きを確認していく必要がありそうです。
そのため、「民泊なら年間180日営業できる」と考えるのではなく、物件所在地の自治体でどのような条例や制限があるのかを事前に確認することが、これまで以上に重要になっています。
本格的に宿泊事業をするなら旅館業?
年間を通して宿泊施設として営業したい場合は、旅館業許可を検討することになります。
例えば、
- 年間を通して営業したい
- 宿泊事業をメインの事業として運営したい
- 180日を超えて稼働させたい
- 民泊から本格的な宿泊施設へ切り替えたい
という場合です。
特に福岡市のように観光客が多い地域では、「180日ではなく年間を通して営業したい」というご相談も少なくありません。
そのため、当初は民泊を検討していたものの、収支を考えて旅館業許可に方向転換するケースもあります。
「180日以上営業したいから旅館業」で決めるのはちょっと待って
ここが、宿泊施設を始める際に特に注意していただきたいところです。
「年間を通して営業したいので、旅館業許可を取ります」
事業計画としてはそれでよくても、その物件で旅館業ができるかどうかは別問題です。
旅館業を始める場合には、旅館業法だけを確認すればよいわけではありません。
例えば、
用途地域
そもそもその場所で旅館・ホテルを営業できるのか。
建築基準法
現在の建物を旅館として使用できるのか。用途変更や建築上の対応が必要にならないか。
消防法
自動火災報知設備、誘導灯、非常用照明、消火器など、どのような消防設備が必要になるのか。
旅館業法・自治体の条例等
客室、設備、管理方法などが基準を満たしているか。
こうした点を一つずつ確認していく必要があります。
同じような戸建住宅でも、建物の面積や構造、使用する階、宿泊させる人数などによって必要な対応が変わることがあります。
マンションの場合は、さらに管理規約や建物全体との関係など、戸建てとは違った確認も必要になります。
一番大切なのは「物件を買う前」の確認
宿泊事業のご相談を受けていて、特に大切だと感じるのがこの点です。
できれば、物件を購入・契約する前に調査してください。
「民泊や旅館をやりたい」と思って物件を購入した後で調べてみると、
「旅館業ができない地域だった」
「想定していなかった消防設備が必要だった」
「建築基準法上の問題が出てきた」
ということもあり得ます。
物件そのものは魅力的でも、許可を取るための工事費が想定以上にかかれば、当初考えていた事業計画が大きく変わってしまいます。
逆に、最初に調査しておけば、
「この物件なら旅館業を目指せそう」
「旅館業より民泊の方が現実的」
「この物件は見送った方がよい」
という判断がしやすくなります。
結局、民泊と旅館業はどちらがいい?
年間を通して本格的に宿泊事業を行うのであれば旅館業が有力ですし、住宅としての利用を残しながら年間180日以内で営業するのであれば、民泊が適している場合もあります。
大切なのは、まず「どんな宿泊事業をしたいのか」
民泊か旅館業かを考えるとき、まず大切なのは事業計画を考えることです。
年間を通して営業したいのか、180日以内の営業でよいのか。
どのくらいの宿泊人数を想定するのか。
どのエリアで、どのようなお客様をターゲットにするのか。
こうした事業計画をある程度決めたうえで、それに合った制度、場所、物件を探していくのが理想です。
「この物件が気に入ったから、ここで旅館をやりたい」と物件を先に決めてしまうと、後から調査した結果、旅館業ができなかったり、想定以上の設備や工事が必要になったりすることがあります。
一方、すでに所有している戸建てやマンション、空き家などを宿泊施設として活用したい、というケースもあるでしょう。
その場合は逆に、その物件を前提として「旅館業ができるのか」「民泊ならできるのか」「どちらが事業として現実的なのか」を調べてから事業計画を立てることになります。
つまり、
これから物件を探すなら「事業計画 → 場所・物件選び」
すでに物件があるなら「物件調査 → できる方法を確認 → 事業計画」
という順番で考えると分かりやすいでしょう。
「民泊と旅館業、どちらがいいか」は、制度だけを比較して決めるものではありません。
やりたい事業と、その場所・物件で実際にできること。この両方をすり合わせて決めることが大切です。
宿泊事業は、保健所だけでなく、建築、消防、都市計画など複数の法令・行政機関が関係します。
特に既存の戸建住宅やマンションを宿泊施設として利用する場合は、物件ごとに確認すべきポイントが変わります。
当事務所では、福岡市を中心に旅館業許可・住宅宿泊事業(民泊)の手続きを取り扱っており、許可・届出の手続きだけでなく、宿泊施設として利用できる物件かどうかの事前確認についてもご相談を承っています。
これから宿泊事業を始める方は、物件を購入・契約する前の段階で一度確認されることをおすすめします。

